私だけを


「俺の。触んな」

低くて、透き通ってて、どこか切ない彼の声。

言葉は全然優しくないのに、何故だか私の心は愛しいくらいに締め付けられる。

桐谷君…。

「邪魔。退いて」

そう言って水谷君の前にくる。

ぼやける視界に彼の綺麗な顔が近づいてくる。

少し強引に私の身体は軽々と持ち上げられる。

「やっ…」

反射的に言葉を発していた。
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