私だけを

「別れた気、ないから」

色っぽく、聞こえた。

私の心を乱す声と、言葉。

「嫌ですっ…」

「あんたは別れたいって言ってないじゃん」

あんた、なんて言わないで。

「藤川舞香…名前、あるの」

名前なんて、呼んでくれる筈もなくて、教えても意味なんてないのに。

「舞香」

名前を呼ばれただけなのに私の胸は高鳴っていくんだ。
< 29 / 38 >

この作品をシェア

pagetop