私だけを


「舞香は俺と別れたいなんて言ってなかった」


確かに、言わなかった。

別れたいと言っていない。それは、私の心からだろうか。

ー…別れたくない。

きっと私の心の何処か隅にある。

「だから、別れないから」

「嫌っ…」

「じゃあ今、舞香の口から〝別れたい〟って言えば?」

言え、言え。言えば解放されるんだ。

でも、私の口から一言も出ないのは、


ー…きっと。

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