死にたがりヒーロー
『おじさんは、君のお母さんを連れてすぐに戻るから! ね?』
母を助けようと、炎のなかに残った伊都のお父さん。
『大丈夫だから、古都ちゃん、大丈夫だから』
泣きわめく私を抱きかかえ、咳き込みながらもそう言った伊都のお母さん。
『古都ちゃん、お母さん‼』
『い、いとくん……っ』
なんとか炎から逃れられると、そこには、伊都が涙を目に貯めながら私たちを待ってくれていて。
『おとう、さんは……?』
『……大丈夫、大丈夫よ伊都』
『だって、だって、あんなに……!』
振り返るとそこは、ごうごうと音をたて想像以上に激しく燃え上がっていた。
消防車や野次馬に囲まれたそれは、もう私の知っている“私たちの家”ではなかった。
どうしよう、あそこにはまだ……!
そう思ったときだった。
『お母さん……⁉
お母さん、お母さん……っ‼』
悲痛な叫び声が聞こえた。