死にたがりヒーロー
確かにそんなことが、前に一度だけあった。
学校からの電話でそれを知ったおばさんは、できあがったほかほかのご飯をお預けにして、数時間に渡り私たちを正座させお説教したのだ。
怒鳴ったりはしなかったけれど、目が笑っていなかった。
「や、で、でも! 遅くなったけど結局は、ご飯食べさせてくれたじゃん! ね?」
「おばさん、一度目は許しても二度目はなかなか許さない主義だけど。 古都もよく知ってんだろ?」
「う……」
知ってる。 よく知ってる。
過ちは誰にでもあること。 だからね、一度目は多目に見てあげるんだよ。
それがおばさんの口ぐせみたいなものだ。
一度目のあれが多目に見られていたんだったら、二度目はいったいどうなるのか……。考えただけで恐ろしい。
「……わかったよ、ハンバーグのためにも授業出る」
渋々立ち上がって、制服のスカートをパンパンッとはたく。
すると、伊都はそんな私を見上げて言う。
「さすが、古都。 食べものにつられるとは」