死にたがりヒーロー
ほんの少し口角の上がった意地悪な表情。
普段は無表情なくせに、こういうときだけ! と、むかっとするけれど、これだって昔からのことなのだ。
伊都は、私に意地悪だ。
「ハンバーグだからだもん! おばさんのハンバーグは世界一おいしいんだから、食べられないなんて絶対に嫌なの!」
「あーそうだな、わかったわかった」
「なにようー、そのてきとうな返事」
「いつものことだろ?」
わかってるなら、ちゃんと返事してほしいんですけど。
そんなことを言っても無駄なのも、よーくわかってる。これも、昔からだから。
見た目はよくても、変わっていて、意地悪な幼なじみ。
けれど、それでも。
「……あ。 伊都も、教室、戻るよね……?」
「ん、戻るけど」
「……そ、か」
ほっと胸を撫で下ろした私の頭に、ぽん、と大きな手のひら。
「大丈夫、おまえは俺が守るよ」
そんな幼なじみでも私にとっては、誰よりもかっこいい
ヒーローだったりするのだ。