目には目を、歯には歯を
逃亡
何とか、逃げおおせた。

男は、荒く息をつくと、飛行機を降りた。

…これでもう、安心だ。

黙っていても、笑みがこぼれる。
こんな名前も知らない国、誰も追ってこれはしまい。

俺は、逃げおおせた。

これから、またほとぼりが冷めた頃に、また戻ればいいんだ。

いや、戻らなくたって。
こんな小さな国、出てしまえば俺を追うのは不可能だろう。
ここで、やっちまっても構わないんだ。

更に笑いがこみあげてくる。

高揚した気分のまま、男は名前も知らないその国に降り立った。

長くいるつもりだから、最初はホテルに泊まっても、そのうちアパートでも借りなきゃならないな。
いくつめの偽名で泊まるかな。

妙にうきうきしたまま、男はタクシーを拾い、適当なホテルに向かう。
ホテルのフロントで、チェックインの時に男が書いた名前は『ジャック・ブラッド』

この国での男の名前だ。
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