目には目を、歯には歯を
通常の取り調べとは異なっていたが、それはまさに取り調べそのものだった。
だが、署長やジャックの会話を筆記している者も、録音している様子もない。

ジャックは焦りと戸惑いに翻弄されていた。

「…それで?」

今までの従順な態度を一変し、ジャックはソファーに座り直した。
高く足を組み、ふてぶてしい態度になる。
爽やかで感じのいい笑顔は奥にひっこみ、替わりに片頬だけつり上げるような不適な笑みを浮かべる。

ジャックの印象の変わり様に、周りの警官たちがざわついた。

「……ここに呼ばれたからには、理由は判っているのだろう? ジャック・ブラッドくん」

署長がため息混じりにそう言った。

「俺が殺した、って?」

鼻先で笑いながらジャックが応ずる。

「…そうだ。君がやったんだ。…あんなに、残酷に」

吐き捨てるように署長が言い放った。

「弁護士もいないのに、これ以上俺がしゃべるワケにはいかないけどなぁあ?」

小馬鹿にしたようにジャックが言うと、また警官たちの間からざわめきが起こる。

弁護士、という聞き慣れない単語に反応したのだ。

ジャックは少し不安になってきた。

――このまま、有罪を確定されてしまうのか?
まともな裁判もなしに?




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