目には目を、歯には歯を
男性は、ジャックの前に立って歩きながら話を始めた。
「私の名は、フェルナンデス。監視員の一人です。あなたはこの国の方ではないと聞いておりますが、この国の法についてはご存知ですか?」

「…いや、知らない」

ジャックはぶっきらぼうに答える。

昨日から、謎めいた事ばかりで、キチンとした説明など何もなされていない。
いい加減に腹が立ってきていた。

「…そうですか。では、申し訳ないが、明日まで説明は控えさせていただきましょう。…あなたが犯した罪は殺人罪だと聞きましたからね…」

ジャックは思わず拳を握りしめた。

「一体、どういうつもりだっっ!
 何の説明もないっ!
 弁護士による弁護もない!
 裁判もない!
 …俺が犯人かどうか、本当には判ってもいないくせに!」

語気も荒く、ジャックが言い放つと、前を歩いていたフェルナンデスが、ようやく振り返った。

「…犯人じゃなければ、裁きは下りません。それで判明しますからね。冤罪はあり得ない。…そして、罪を逃れることもできない」

最後の方は、不適な笑みを浮かべての言葉だった。


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