目には目を、歯には歯を
「あれが……裁きだって?」

「そうですよ。あなたは、ダイアナさんの気持ちが、痛みが、よく判ったでしょう……?」

フェルナンデスが、手でジャックにソファーを指し示す。

座れ、ということか。

ジャックは大人しく腰をかけた。

向かい合ったベッドに、フェルナンデスも腰を下ろした。

「この国の法律は、ただ一つ。『目には目を、歯には歯を』です」

何だ、それは?

いきなりそんな言葉を出されても、ジャックには理解が出来ない。

訳の判らないことを言うフェルナンデスを、黙って睨み付けた。

「判りませんか……? この国では、事故や事件が少ないとは思いませんか…?」

ジャックは黙って頷く。

それは、この国についてから、ずっとジャックが疑問に思っていたことだ。

だが、事件だけではなく、なぜ、事故まで……?

「事件にせよ、事故にせよ、裁きの方法は、被害者が選ぶことが出来ます。……殺人を除いて、ですが」

殺人、という単語をフェルナンデスは強調して話した。

「殺人では、被害者が選択する余地がありませんからね」

当然のことだ、と言わんばかりの口調だ。


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