目には目を、歯には歯を
ジャックは、キャサリンを押さえつけると、楽しそうな笑みを浮かべながら、足の先から斬り付けていった。

ゆっくり、

ゆっくり。

その時の、恐怖に怯えるキャサリンの表情を、仕草を、ジャックは見て心底楽しんでいる。

だが、キャサリンの意識を感じているジャックは、その自分の表情が恐ろしく醜く見えた。

――恐い! 恐いっ!!
  痛い! 痛いっ!!
  誰か助けてぇっっ!

悲痛なキャサリンの、心の叫びがジャックの脳裏に突き刺さる。

痛みは、実際の傷の痛みより数倍痛く感じた。

普段のジャックが、これくらいの傷で味わう痛みとは比較にならない。

キャサリンが痛みを感じやすいのか?

それとも、恐怖が、痛みを倍増させているのか?

どちらにしろ、ジャックが初めて味わう、痛みの感覚の「ズレ」だ。

ジャックのナイフが、ゆっくりゆっくり、身体の上の方にまで上がってくる。

キャサリンの心臓の鼓動は、心臓が飛び出しかねない勢いで鼓動を繰り返す。

ジャックの微笑みは、ますます楽しそうになる。


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