アイ
「・・・あの事件の日の数日前から、いじめっ子は無視をするけれど暴力はやめました」
中学生の彼女は、一度水を飲み、そして、また語りだした。
「だから、もうアイツ俺嫌いだし殺す」
「はー?」
「・・・いや、殺さねーけど痛い目にあわせれば俺らの怖さ、わかるだろう?」
・・・何言ってんの?
「どーすんだよ、山から落とすとかできねーぞ」
「わーってるよ。交差点で押すんだよ」
「は?バレるぞ!」
「バレねーよ。だって、ぶつかったとかいえばいいだろー」
「へー。いいね」
「・・・そして、彼らは計画を実行しに行きました。けれど、運が悪かったのかよかったのかちょうど、酔っぱらいのおじさんがいて、彼らがその人に思いっきりぶつかり、酔っぱらいの人が・・・古木にぶつかって・・・」
事故じゃ・・・なかったんだ。
・・・完全な・・・事件じゃない。
「・・・どうして、言わなかったの・・・このこと」
彼女は黙った。
「・・・自分の身を守るためです。彼らは、古木が死んだ現場を見た瞬間逃げました。・・・そして、後から私に『絶対に言うな』と言ってきました。先生に言おうと思いましたが、私はそこまでの勇気がなかった。・・・だから、事故として・・・。ごめんなさい」
・・・私こそ、自分のことしか考えてなかった。
・・・言ってくれて、ありがとう。
「いじめっ子のリーダー・・・の名前、何にもならないと思うけど言いますね・・・。」
「え?、ありがと!」
本当に何にもならないだろうけど・・・。
「彼の名前は・・・
田村 健二。確か、あなたくらいに姉がいて・・・名前が、田村 愛 です。」