アイ
最強の仲間。
そう、彼女は口だけが強いんじゃない。
人殺し、だから。
「・・・ごめんなさいね、田村さん、座っていただける?」
先生は丁寧に愛ちゃんに謝る。
いつのまにか、蒼井ちゃんは座って携帯をいじり始めていた。
近くで、マナーモードの時になるバイブが聞こえる。
・・・そう、楓ちゃん。
snsをしているようだ。お互いに画面を見て笑っている。
そして、お互いの表情を確認しあう。
「先生は、今この教室にいる人が何をしているのかわかりますか?」
「え、えぇ・・・もちろん。私の立ち位置は、みんなよりも高いからね」
この学校の教卓の近くは一段高くなっている。
「じゃあ、今森田さんが何をしているか、わかりますよね」
楓ちゃんは私の後ろ。
私のほうが楓ちゃんより顔1個分身長が高い。
そのため、楓ちゃんは私に隠れることが多い。
「・・・わかるわよ」
「なら、言ってください。どうぞ」
「・・・森田さんは・・・今下を向いているわよね。・・・」
「えぇ」
「筆箱を出していない・・・ということで携帯ね」
「その通りです、素晴らしい。けど、先生のその目はあくまで見た目。違うんですよ。今を生きるときは、このめじゃ・・・。」
何を言っているの?
と言いたげな先生の表情を見て真面目さんが立ち上がる。
「そんなことは、どうでもいいの。田村さん。それより、先生の話の続きを聞きましょう。このために今日、呼ばれたみたいなもの」
「・・・そうね」
しぶしぶ座る愛ちゃん。
私は口パクで愛ちゃんに 『ありがとう』と伝えると、愛ちゃんは嬉しそうにニコリと笑う。
愛ちゃんは最強じゃない。
私の手の中で転がっている、卓球の球みたいなもの。
私が、動かせば彼女は動く。
傾ければ彼女も傾く。
私の手の中で彼女に命令をすると、彼女はニコニコとその命令に従う。
最強を操っているのは私だ。