アイ
私は生きている

ふっと考えたあの日の私。

弟が死んで、私は一人っ子となった。
親は、弟が最初からいなかったように、写真もすべて捨てた。
唯一、まだ生き残っているのは、みんなで撮った母の実家の近くの海で撮った家族写真。
『あのころは・・・』
なんて、今は思う。
もし、弟が死んでなかったら・・・死ぬことはなかった。

夏休みのある日に私はそう考えた。
これは、まだ重田も死んでいない日だった。


目が覚めると、いつもと変わらない天井があり、外からは蝉の鳴き声。
おばちゃんたちの会話。
店の人がいう「ありがとうございましたーっ」。
近くの公園で遊んでいる子供たちの、笑い声。

・・・いつもと変わらない 日 が始まる。

だるくて、重い体を起こし窓の外を見る。
快晴。

「う~・・・・ん」

体を伸ばし、私は本屋へと向かう準備をする。
髪の毛はストレート・・・からのカール。
内巻きにする。
中学3年のころに習った。

服は、スカートではないがかわいい服を選ぶ。

なぜなら、重田が本屋に行くと言っていたから。

「よし、いこーっと」

ビックリさせるんだ~・・・という思いで私は家を出る。
元気な声で

「いってきまーす」っと。





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