妖の王子さま



「白玖、大丈夫?」

「バカ・・・、出てくるな」

「でも!」




蒼子が白玖の身体を支える。
白玖は苦しそうに顔を歪めながら、蒼子の手を払った。

白玖の身体は全身傷だらけで痛々しい。




「白玖、大丈夫?傷・・・」

「触るな!」




伸びた手を白玖は払い叫んだ。
蒼子は怯えた表情を見せる。
白玖は険しい顔で蒼子を見るが、すぐに視線を逸らした。





「弱りきった狐がいると聞いて駆けつけてみたが、なんだ逢引の最中だったか?」




突然聞こえてきた少し高めの声。
白玖たちが顔をあげると、そこには・・・。




「朱鬼・・・っ」




真っ赤な長い髪、そして金色の二本の角。
右目には眼帯をし笑った口からは牙がのぞく男。




赤の国の大将、鬼の朱鬼だ。



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