妖の王子さま
「多々良、一つだけ・・・。傷を治す前に一つだけ聞いてもいい?」
「はい。なんでしょう」
屋敷に戻りいつもの部屋で傷に倒れた白玖の前で蒼子が尋ねる。
「白玖は、いつもあんな戦い方をしているの?」
「・・・いずなの攻撃に向かって行ったことをおっしゃっているのですか?」
「うん」
「・・・そうです。白玖さまは、振るわれた剣をよけることはあっても、敵に向かう時に向かってきた攻撃を防いだり、よけたりはなさいません。そのままを受け止め、自分の攻撃に集中されているのです」
どうして、そんな自分を犠牲にするような戦い方をするのだろう。
その結果、気を失うほどのケガを負って。
でも、その戦い方のおかげで相手にもそれ程の傷を負わせられているのかもしれない。
だからといって。
「そのように、教え込まれているのです。敵にただその力のすべてを叩きこめ。自分の身体が殺がれようが、傷つこうが、かまうな、と」
「誰が、そんな・・・っ」
「白玖さまは、それを忠実に守っておられます。自分の身など、顧みず」
どうしてそうまでして・・・。
蒼子は、静かに目を閉じた。