妖の王子さま
今までのは白玖なら、自らの事を気にしない以上に、他人になど興味など持たなかった。
例え自分の従えている部下たちがケガを負ったとしても、気にかけることなどましてやこうして見舞うことなどなかったのだ。
それが、男であっても女であっても同じだった。
それなのに。
今、目の前にいる白玖はまるで蒼子の身体を気遣っているような態度をとる。
その変化が、嬉しくもあり不安だった。
白玖の強さは、無であるからこそでもあるのだ。
なににもとらわれず、興味を持たず。
傷つくことに恐れずいられるのは、大切なものも何も持っていないから。
「白玖さま・・・」
「出て行って。今は、多々良の言葉、聞きたくないんだ」
拒絶されるような言葉に、多々良は胸を傷つかせる。
しかし、なにも言わずいわれたとおりに部屋を出た。
白玖のためにと連れてきた蒼子の事を、少しだけ後悔してしまう多々良なのだった。
変わっていくことを前向きにとらえていたかったはずなのに。