妖の王子さま
「白玖・・・?」
目をあけた蒼子が、白玖の名を呼んだ。
それだけで、胸がホッとしたのだ。
胸が落ち着いたことに、白玖は首をかしげる。
こんな気持ちも、知らなかった。
「蒼子」
「おはよう」
「・・・もう夕方だ」
「そっか」
優しげな蒼子の表情に、白玖は目が離せなくなる。
この想いはなんだろうか。
この人間に対する自分の思いは。
なんと呼ぶのだろう。
「身体は、痛むか」
「・・・ううん。平気」
「そうか」
「うん。いったでしょ。私の身体は他の人間とは違うの」
そう言った蒼子は少し寂しげに微笑む。
それが無性に心が落ち着かず蒼子の手を握っていた。