妖の王子さま


「でも・・・、少しだけ。自分の事を大切にしてほしい」

「大切に・・・?」

「うん」

「蒼子は、難しいことを言う」




大切にしたところでなんになる。
自分には、使命があるのに。

そのためには命だって厭わない。



そう信じて。




「白玖に、傷ついてほしくないの」




なにを言っているのだろうと思う。
そう言いながら蒼子は、自分の傷を引き受け傷ついているというのに。




「早く元気になれ。蒼子の膝枕がないと眠れない」

「ふふ、そうだね。うん。もう少し・・・、もう少しだけ眠らせて・・・」





そういうと再び瞼を閉じる。
うとうとと次第に眠りに落ちていく蒼子を、白玖はまたただ見つめている。





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