妖の王子さま



「志多良はいつも元気ね」



そんなことを言いながらお屋敷の方へ戻ってくる。
廊下にあがると、白玖が蒼子の身体を包み込むように抱きしめた。




「え、は、白玖?」




突然の事に驚き白玖の身体を押し返そうとするが、ピクリともしない。
戸惑いながら白玖の腕の中に納まる。




「どうしたの・・・?」




そう尋ねるが、白玖は応えようとしない。
蒼子はドキドキと心臓を高鳴らせた。
顔が熱い、きっと赤くなっているに違いないと恥ずかしさに白玖の着流しに顔をうずめた。


白玖は、黙ったままそっと蒼子の身体を離した。


しかしその顔は、怪訝そうに眉を顰めている。



「・・・は、白玖?」



恥ずかしさに顔を俯かせながら尋ねる。
しかし、白玖は眉を顰めたまま。




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