妖の王子さま
「なぜ笑わないの?志多良には笑ったのに」
「・・・・え?」
ふて腐れたような声色に、蒼子は目を丸くさせる。
「蒼子はこうやってやったら笑うんじゃないの?違うの?」
「え、えと・・・。志多良は、まだ子どもで・・・」
どう答えようかと戸惑いながらそう言った。
白玖はそれでも、不服そうな視線を蒼子に向ける。
「は、恥ずかしかったんです・・・!白玖に抱きしめられて・・・。嬉しかったけど、それ以上に恥ずかしかったの!」
照れくさい想いを誤魔化しても白玖には通用しないと思い切ってそう言った。
いやなわけではなかった。
照れくさくて、胸がドキドキ鳴った。
「わけが分からん。なぜ志多良だと嬉しくて、おれだと恥ずかしいの」
「そ、それは・・・」
そんなことを、うまく説明などできない。
そういう感情を知らない人に対して、どう説明するのが正しいことなのか知らないのだから。