妖の王子さま
今日のこの日は、両親の命日だったのだ。
だから、両親の墓参りだけにはいきたかった。
向こうから持ってきた財布の中にあるお金で花を買い電車に乗った。
流れゆく景色がひどく懐かしく思える。
十数年も過ごしてきた世界が、今はとても遠くに感じた。
さびれた駅で降り、駅の側の山を登る。
その奥にあるお寺、そこに両親の墓はある。
買ってきた花を供えると両手を合わせ目を閉じた。
話したいことはたくさんあった。
妖の世界の事。
白玖と出会ったこと。
辛いこともあるけれど、何とか頑張っていること。
きっと、見守ってくれているような気がしたから。
「また、これたらいいな・・・」
そう呟くと、とても切なく思えた。
自分はまた妖の世に戻る。