妖の王子さま
すすんでいくと見えたのは、大きな湖。
その頃にはすっかり日が落ち、湖は不気味に佇んでいた。
しくしく・・・
その声は、すぐ側で聞こえる。
目を凝らしてみると湖のほとりで蹲っている女の人を見つけた。
その人の服装は着物で、不思議に思いながらも蒼子は近づき声をかける。
「あの、どうしたんですか?」
おずおずと声をかけると、女の人は泣くのをやめる。
そして少しだけ顔をあげ、蒼子を覗き見た。
「寂しい・・・悲しい・・・」
すすり泣くような声で囁く。
蒼子は、慰めるように体を寄せた。
「一緒に・・・きて・・・」
女の手がするすると蒼子に近づいていく。
しかし、蒼子はそれに気づかない。
小さくささやく女の声を聞こうと耳を澄ませていた。
「いこう・・・」
そうして、女が蒼子に触れようとしたその時。