妖の王子さま
「あ、あの・・・、牛鬼さん。あなたが浚った人間たちを返してください。そうすれば、命をとったりしませんから」
蒼子は、牛鬼に訴える。
牛鬼は苦々しく眉を顰め、渋々ながら術をといた。
湖のほとりに数人の男女それぞれの人が現れる。
その人たちは意識を取り戻すと、首をかしげながら湖から出て行った。
「ありがとう。どうしてこんなことをしたの?」
「・・・」
「蒼子、理由なんて聞いてどうするの」
「だって・・・」
『寂しい・・・』
あの声は、心からの声に聞こえた。
なにか、理由があるように思えたのだ。
「そう言えば、・・・あなた、白玖の事、知ってたよね?妖怪なら、誰でも知ってるの?」
「さあ。知らずに生きてるやつもいるだろうけどね」
「俺は・・・」
黙り込んでいた牛鬼がおずおずと話しだした。