妖の王子さま
「俺は、朱鬼さまの下で働いていたんだ・・・」
「朱鬼ってあの・・・!?」
「強くて、美しくて、憧れだった・・・でも」
ポロポロと大粒の涙。
「俺、こんなだから・・・。美しくないものはいらないと捨てられて・・・ここに来たんだ」
「美しくないって、そんな理由で捨てたの?ひどい!」
「仕方ないんだ・・・。俺が美しくないのがいけないんだ」
「牛鬼さんは悪くないわ!美しくなくて何が悪いの!牛鬼さんはこんなに強くてたくましいのに!」
蒼子は熱く訴えた。
そんな理由で自分を慕ってくれている妖怪を斬り捨てるなんて許せなかった。
「ねぇ、白玖のところに来なさいよ。私もいるからさ。ね、一緒に行こう」
「蒼子、なに勝手に」
「いいじゃない。味方は多い方がいいでしょう?」
「お、俺は朱鬼さまの手下だったんだ・・・。それなのに、狐のもとにいくなんて・・・」
牛鬼は戸惑う。
まさかそんなことを言われるとは思いもしなかったのだ。