妖の王子さま
「でも、その朱鬼には見捨てられたんでしょう?それでもしたがっていたいの?」
「それは・・・」
そう簡単ではないことはわかっている。
いくら見捨てられたとはいえ、慕っていた妖怪なのだ。
もしかしたらという希望を捨てたくない気持ちだって蒼子にはなんとなくわかる。
「一人は、寂しいでしょう?」
「・・・っ、でも、俺は。狐につくのはやはり気に入らん」
「牛鬼さん」
「だが!あんたになら、ついていってもいい」
「・・・え?私?」
「俺はあんたに、すべてを捧げる。あんたの護衛でも、家来でも、なんにでもなる」
「わ、私は。私はただの人間だし、そんなお付の人なんていらないんだけど・・・」
「あんた以外につくのはいやだ」
はっきりと言い切る牛鬼に、蒼子は戸惑う。
それでも、来る気になってくれているだけいいのかと思い直す。
「・・・白玖、いいかな?」
「すきにしたらいい。でも、俺は面倒は見ないよ」
「う、うん・・・。じゃあ。牛鬼さん一緒に帰ろう!」
こうして、牛鬼を連れ、白玖の屋敷まで戻ることになった。