妖の王子さま
「牛鬼、ここの生活には慣れた?」
「だいぶ。あの狐の大将のやる気のなさには驚いたけどな!」
「やる気・・・。うーん。でも、最近は少し感情が見えるようになったのよ。さっきみたいにね」
何事にも無関心だった白玖。
でも最近は少しずつ心が生まれているように思う。
さっきのだって、牛鬼の言葉に心をイラつかせていたし。
そんな心の感情が生まれる事すら進歩だと思うのだ。
「以前、朱鬼さまが言ってたんだ」
「え?」
「狐の大将は、操り人形だと・・・」
「操り人形・・・?どういうこと?」
「さあ。下っ端の俺には詳しいことは」
どういう事なのだろうか。
操り人形。
それは、白玖を操っている“誰か”がいるということ?
「蒼子さまは、どうして妖の世にいるのだ?人質にでもなっているのか?」
牛鬼に問われ、蒼子は答えに困った。
自分の不気味な力を必要として連れてこられたのが始まりだった。
でも、今ここにいるのは自分の意思のような気もしてきたのだ。