妖の王子さま
「蒼子さん!」
騒々しくなったのはその日の夜の事だった。
突然部屋にやってきた多々良が青ざめた顔で蒼子を呼ぶ。
白玖に何かがあったのだと、悟った。
「蒼子さま?」
「牛鬼、ごめんね。ここで待っていて」
事情の知らない牛鬼に蒼子はそう言って部屋を出る。
何度こうして呼ばれても慣れない。
白玖の状態を見るまで、怖くて仕方ない。
どれ程の怪我なのか。
どれ程の状態なのか。
「戦が始まるなんて、言ってなかった・・・」
「・・・白玖さまが、蒼子さまには伝えるなと」
「どうして・・・」
白玖の命令だったと知ると、蒼子は切なげに瞳を揺らす。
多々良は、あえて蒼子を見ようとせずただ前を見ていた。