妖の王子さま
次第に、落ち着いてきた呼吸に白玖の唇が離れると、蒼子はぐったりと意識を手放していた。
涙に濡れる頬。
赤く染まった着物。
傷だらけの身体。
「・・・なぜ知らせた」
白玖の低い声が響く。
多々良は肩を揺らせ白玖を見た。
「蒼子には知らせるなと言ったはずだ」
「しかし―――――」
なぜこんなにも、胸がざわつくのだ。
蒼子の傷ついた身体を、苦しむ顔を見ると。
こんなにも、胸が。
「おれの部屋に連れてゆく」
「・・・は」
白玖がそう言い、蒼子を抱き抱え立ち上がる。
多々良は苦渋の表情でうつむいた。