妖の王子さま
「蒼子さま!?・・・蒼子さま!おい、これ、どういう事だよ!」
白玖が傷だらけの蒼子を連れ部屋に戻ると、言いつけどおり待っていた牛鬼が顔色を変え駆け寄った。
数分前までにこやかにしていた蒼子が、真っ青な顔で傷だらけになって帰ってきたのだ。
「・・・黙れ」
「な、貴様のせいなのか!?そうなんだろう!おい!説明しろ!」
「牛鬼!貴様、白玖さまに失礼だ!」
「うるせえ!俺はこんな奴認めてねぇんだ!俺が認めてるのは、蒼子さまだけだ!」
暴れる牛鬼を志多良が必死で抑える。
牛鬼は怒り狂い、白玖にかみつく勢いだ。
「志多良、そやつを外に出せ」
「はっ」
白玖の命を受け、志多良が牛鬼を外へと引っ張り出し庭に突き落とした。
尻餅をつきひっくり返った牛鬼は怒りを露わにし、起き上り向かって行く。
志多良が二本の指で葉を取り出し牛鬼に向けて投げた。
葉は、竜巻を生み牛鬼の回りを旋回すると牛鬼の身体を縛り上げ地面に叩きつけた。
「しばらく大人しくしておれ」
志多良はそう告げると部屋の中に戻った。