妖の王子さま
夢を見ていた。
怖ろしい夢。
苦しくて、悲しい夢だ。
「うなされていた」
「・・・怖い夢を・・・見たの」
「怖いものなど、なにもないよ」
「・・・うん」
白玖の言葉に安心する心。
蒼子はゆっくりと瞬きをし心を落ち着かせた。
「蒼子、お前が傷だらけになる姿を見ると、俺は胸が痛くなる。なぜだ?」
「え・・・?」
「こんな気持ちは、初めてなのだ」
まっすぐ向けられた疑問に、蒼子は答えられなかった。
白玖に生まれた想い。
その想いを、どう言葉にすればよいのかわからない。
それでも、その気持ちを大切にしたくて。
「白玖が、優しいってことだよ」
そう告げた。