妖の王子さま
「あれ・・・、牛鬼は?」
蒼子は、部屋を見渡し牛鬼がいないことに気づいた。
白玖は少し黙った後、志多良を見る。
志多良は部屋を出て、縛り上げていた術を解いた。
「蒼子さま!」
慌ただしく入って着た牛鬼が、蒼子に駆け寄った。
「ど、どうしたの・・・?」
「なんで、傷だらけになってるんだ!こいつらのせいなんだろ!?おかしいと思ったんだ、人間の蒼子さまがこんな妖の住処にいるなんて!」
捲し立てるように牛鬼が叫んだ。
蒼子は戸惑いながら身体を起こす。
「なにも言わずに行っちゃって、ごめんね。私は、大丈夫なのこの身体ね、すごく丈夫にできてるから」
蒼子はそう言って健気に笑った。
着物を赤く染め上げ笑う蒼子は、痛々しく見えた。
「こんな、女子の身体を痛めつけるような狐のやり方を、俺は認めねぇ!」
牛鬼はそう叫ぶと、蒼子の身体を抱きしめた。