妖の王子さま
四ノ章
浚われた蒼子
このところ、襲撃が増えていた。
特に、蒼の国の天狗の襲撃が。
その度、傷を負い帰ってきた白玖だったが、意識があり戻ってきたときには頑なに蒼子の力を使わせようとしなかった。
それがどういう意図でなのか、白玖の中でどんな心境の変化が起きているのか誰のもわからなかった。
白玖自身にも、わかってはいなかった。
「はぁ・・・」
蒼子は廊下に座り、庭を眺める。
白玖は、この頃部屋にあまり戻って来ない。
以前志多良が言っていたように、どこかを渡り歩いているのだろうか。
ちゃんと、眠っているのだろうか。
ご飯は食べているだろうか。
蒼子はそんなことを考えながら、こみ上げる想いをため息にして吐き出した。
「そんなに、あの狐が気になりますか?」
「え?」
「蒼子さま、元気ない」
心配そうな牛鬼の顔。
蒼子は少し考えて、にっこりとほほ笑んだ。