妖の王子さま
「俺、やっぱり―――――――」
牛鬼が、思い詰めた表情で言葉を紡いだその時。
大きな羽音が近づき、突然何者かが蒼子を浚っていった。
忽然と姿を消した蒼子。
牛鬼は立ち上がり辺りを見渡すが、もうどこにもその姿は見当たらなかった。
「蒼子さま!蒼子さま!!」
牛鬼の声に、志多良や多々良もその場に集まってくる。
騒然としたその場にひらひらと黒い羽が舞い落ちた・・・。
「黒い羽・・・」
多々良がそれを拾い上げ眉間にしわを寄せ空を仰いだ。
「白玖さまを探すのだ」
多々良はそう言うと踵を返す。
その羽をその場に捨て去った。