妖の王子さま
たどり着いたのは、日本の城のような佇まいの建物。
そこがいずなの住処だった。
畳の大広間に連れられ落とすように放り出された蒼子は、恐怖に震える身体を必死で抑えていた。
「情けねぇな。あの程度で」
「は、初めてなんだから仕方ないでしょう?落ちるかと思ったのよ」
「ばかめ。オレ様がそんなへまをするわけないだろう」
奥に置いてある大きな黒い金の装飾の入った椅子にドカッと座ったいずなはバカにしたように笑った。
自信に満ち溢れたいずなの態度。
「あなたたち、いつも突然襲撃して・・・。ずるいと思わないんですか?」
蒼子は、思わず思っていたことをぶつけた。
突然襲撃を受けたと傷ついて帰ってくる白玖を見たのは一度や二度ではなかったのだ。
「なぜ、親切に知らせてから行かねばならん?遊んでいるわけではないのだ」
「それは、そうだけど・・・。それに、決着がいつもつかないのに、戦う意味なんてあるんでしょうか」
「意味?意味など見つけてどうする。戦いに意味などない。生きるか死ぬかそのどちらかだ」
きっぱりと言い切るいずなは、逆に清々しく。
蒼子は、それ以上なにも言えなかった。