妖の王子さま
「お前はなぜ、狐のもとにおる。お前になんの利用価値がある?」
「え・・・」
利用価値。
そう言われて胸が痛んだ。
「価値もないのに置くわけがなかろう。あの狐が、というよりあいつの側におるお目付け役が」
「・・・多々良のこと?」
「そんな名だったか?人間など、おめおめ懐に入れるなど、それ程の価値があるという事。言ってみろ」
射抜くような瞳。
肩ひじをつき、蒼子を見下すように見つめる瞳に耐え切れずうつむく。
利用されている。
そのことは最初からわかっていた。
そう言われて連れてこられたのだ。
しかし、こうして突きつけられると傷つく。
「あなたに、言う必要はありません」
仮にも敵なのだ。
話すわけにはいかなかった。