妖の王子さま
「ちょっと待ってください!そんな勝手に決められても・・・」
「異論は聞かん。オレが決めたことは絶対だ」
「そんな!困ります!」
聞く耳を持たず、蒼子の抵抗もむなしくいずなに簡単に蹴散らされる。
蒼子は顔を青ざめ、その場に立ちすくんだ。
「とりあえず、今日は休め」
「・・・」
「おい、雪野」
いずなが呼ぶと、襖を開け、一人の女天狗が現れた。
真っ黒で長い髪、緋色の袴に小袖、五ツ衣を身に付けた美しい天狗だ。
「女に部屋を与えよ」
「はい、兄上」
美しく微笑んだ雪野は、蒼子に鋭い視線を向け敵意を含んだ瞳で微笑んだ。
「こちらです」
すっと視線をそらされ歩き出した雪野を慌てて追いかける。