妖の王子さま
「あなたが白玖さまのところにいた人間?」
大広間を出てしばらく歩いたところで立ち止まった雪野が振り返り、まじまじと蒼子を見てそう言った。
蒼子は物怖じし、言葉に詰まる。
「色気もないし、出るとこ出てないし。白玖さまはこれのどこが良くて側においてたのかしら?」
「そ、そんなことを言われても・・・」
「言っときますけど白玖さまはあたくしのものですから!」
「え・・・、でも、敵同士なんじゃ・・・」
「だからなんだっていうの?恋は障害があるほど燃え上がるのよ!」
勝ち誇ったような笑顔を見せ、雪野は再び歩き出した。
連れてこられたのは一人で過ごすには十分の広さのある部屋。
「ここを使いなさい。まったく、兄上もなんでこんな人間なんか」
「・・・ありがとうございます」
「バカね。あんた浚われてきたんでしょ?なにお礼なんか言っちゃってるわけ」
冷たくそう言い捨てると雪野は部屋を出て行ってしまった。
残された蒼子はどうしたものかと立ちすくみ、そのまますとんと座り込んだ。