妖の王子さま



いつの間にかうとうとと眠りに落ちていた蒼子は慌ただしさに目を覚ました。
一瞬、ここがどこなのかを忘れ戸惑うがすぐに状況を思い出し気分を沈ませた。



「狐め!」

「急げ!」

「早く、手当てを!」




慌ただしく走る音が聞こえ、蒼子は廊下を覗き込んだ。
天狗たちが慌ただしく走り回っている。
なにかがあったのだろう。

この感じは、覚えがある。
いつも白玖がケガをして帰ってきたときの屋敷の状況に似ていたのだ。




「もしかして・・・」




いずながケガをして帰ってきたのではないか。
そんな胸騒ぎを覚え足をその騒動の中へと進めていた。



様子を見るだけ。
そう決めて初めに連れられた大広間に向かった。



中をそっと覗きこむと、天狗たちは椅子のあたりに集まっていて慌ただしそうだ。
その中に、いずなの姿を見つけた。


目をあけ、自分の力で座っている。
怪我はそこまでひどくはないことが推測できた。





「女、そこでなにをしている」





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