妖の王子さま
蒼子に気づいたいずなは声をかける。
蒼子はビクッと体を震わせた。
戸惑いながらも、仕方なく中に足を進める。
「お前たち、もういい。下がれ」
天狗たちに指示を出すと、そそくさと天狗たちが部屋を出て行った。
残されたのは、いずなと蒼子だけ。
いずなの身体には痛々しい包帯が巻かれていた。
包帯はすぐに赤く染まり、血が止まっていないことを示していた。
「血が・・・」
「ああ。気にするな、じき止まる」
「でも・・・」
「俺を誰だと思っている?か弱き人間と一緒にするなよ」
肩ひじをつき、自信に満ちた顔で蒼子を見る。
蒼子は、白玖とは全く違ういずなの性格に少しだけ戸惑っていた。
「お前を取り戻そうと、狐が来たのだ」
「え・・・」
「そんなにも、人間の女に執着するか」
不思議そうにそう言うと見据えるような瞳が蒼子を捕らえた。