妖の王子さま
「な、んですか・・・?」
ようように絞り出した声で尋ねる。
多々良は、落ち着いた様子でそっと蒼子に近づくとその手を蒼子の頬に添えた。
ビクッと肩を震わせ、多々良を見上げる。
多々良は、まっすぐ色っぽい表情で蒼子を見つめる。
その瞳に、蒼子は吸い込まれそうだった。
人を惑わす瞳だと・・・。
「あなたの力を、主に使っていただきたいのです」
「ちか・・・ら・・・?」
多々良の瞳に吸い寄せられるように。
蒼子はゆっくりと瞳を閉じ、ゆっくりと体を倒していく。
その体を、多々良が優しく受け止め妖艶に微笑んだ。
「歓迎、いたします」
蒼子の身体を抱き上げ、そう呟いた。