妖の王子さま



白玖たちが、自分を求めているのは、自分が不思議な力を持っているから。
求めているのは、自分ではなくその力なのだ。
蒼子は、そのことに少しだけ胸を痛め目を伏せた。




「・・・手当。きちんとした方が」

「面倒だ。放っておけ」




野性的なのか、自分を顧みないところは白玖のようだと蒼子は感じた。
視線をあげ、いずなの傷を見る。
じわじわと赤がにじみ出る。


胸が、ドクンと鳴る。



頭の奥で声がする。







―おとーさん・・・おかーさん・・・・





声が。






蒼子は、衝動に駆られいずなの身体に触れた。
そして目を閉じ、傷に集中する。




「・・・っ」




身体を襲う痛みに顔をしかめる。





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