妖の王子さま



「ばかめ」

「え・・・」



手当てが終わると、いずなは不機嫌そうに眉を顰め言い放つ。




「貴様の力なんぞ借りぬとも、俺はこの程度では死なんわ」

「う、ん。そうだけど・・・」

「それに、お前はもともと狐のもとにいたんだろう。俺は敵だぞ?いいのか、助けて」

「・・・それは。でも、怪我してる人を見たら放っておけなくて」




様子を見るだけと思っていたはずが、目の当たりにすると動いていた。
蒼子は肩を落とし視線を下に落とした。







「この力を、狐は利用しているのか」

「利用だなんて・・・そんな・・・」

「さしずめ、あの多々良とかいう側近の差し金だろう」




畳の上に胡坐をかき座り、蒼子と向き合いながらいずなはそう言った。
あたっているだけに、なんとも言えず黙り込む蒼子。




「ここにいる限り、その力を使う必要はない」

「え」

「俺には、そんなもの必要ない」




いずなはそういうと立ち上がった。




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