妖の王子さま
そんな風に言われたことは初めてだった。
蒼子は、言葉を失い呆然といずなを見つめていた。
「まぁ、仕方ないからな。礼は言っておいてやる」
「・・・っ」
「・・・なぜ泣く?」
いずなが怪訝そうな顔で尋ねる。
いつの間にか、蒼子はハラハラと涙を落としていた。
いずなの指摘で気づいた蒼子は慌ててほおに手を添える。
「なんで・・・」
「めんどくさい女だな、お前は」
「み、見ないで・・・っ」
顔を俯かせ顔を隠す蒼子。
「俺に指図するな。お前の姿を見るか見んかは自分で決める」
「・・・や・・・」
「ほら、見せてみろ」
蒼子の顎をくいっとあげまじまじとその顔を見つめるいずなに、蒼子は視線をそらす。