妖の王子さま
「返してほしくば、力づくで奪うんだな!」
「言われなくてもそうするよ」
白玖はそういうと、地面を蹴り飛ばし一気に距離を詰める。
刀をいずなも羽団扇で塞ぐ。
ギリギリと押し合い、どちらも引こうとしない。
いずなは力任せに羽団扇で白玖を押し返す。
一つにまとまった扇の部分で白玖は頬を傷付けた。
「・・・貴様の、乱れる顔なんて初めてだなぁ。それ程あの女が大切か?」
「大切?なにそれ」
「ふ、無意識か・・・。本当にお前は、愚かだな」
いずなの言葉に、白玖はきりっと睨みつけながら再び剣を振るう。
感情に任せ刀を振るう白玖。
そのような戦い方は初めてだった。
「いいぞ。だが、それがお前の命取りだ」
大きく振りかぶった白玖の刀を羽団扇で払い落とす。
丸腰になった白玖は、刀に手を伸ばすがその手を斬りつけられる。
一瞬怯んだその隙に、いずなは白玖の腹を蹴り上げた。