妖の王子さま
「ぐ、あああああ!」
狐火に身体を覆われ、苦しそうに悶えるいずな。
白玖は立ち上がり、蒼子のもとに駆け寄った。
「蒼子」
「は、白玖」
「帰ろう」
蒼子の頬を優しく撫でそう言った。
蒼子は、戸惑いながら小さく頷く。
「あ、あの、いずなは・・・」
「大丈夫。あれくらいじゃ死にはしない」
「そう・・・」
自分の身体の事を心配してくれたいずなを、心から憎むことも責めることもできなかった。
蒼子は、白玖の手を取ってもいいのか、少し悩んでしまっていた。
「蒼子?」
そんな蒼子に白玖が尋ねる。
蒼子は首を横に振ると、白玖の手を取った。