妖の王子さま
「白玖は、どこに行ったの?」
蒼子は、志多良に尋ねる。
屋敷に戻ってきてすぐに出かけたまま帰ってきていないのだ。
また、どこか渡り歩いているのだろうかと胸を痛める。
胸を痛める理由なんてないはずなのに・・・。
蒼子は自分の心がよくわからなかった。
「白玖さまは、少し所用があってもうすぐ帰ってくると思う」
「そうなんだ」
志多良の言葉に、仕事の一環なのだと思った。
遊び歩いているのなら、志多良ははっきりそう言うだろう。
少しだけ、ホッとした蒼子だった。
「蒼子さま、やっぱりあの狐が気になるのか?」
「気になるって・・・」
「・・・蒼子さま。俺が側にいながら、本当にすみませんでした」
「牛鬼・・・。牛鬼のせいじゃないよ。気にしないで」
牛鬼は戻ってきてからというもの、ことあるごとにこうして頭を下げる。
蒼子が浚われた責任を感じていた。
その時、襖が開かれ白玖が姿を現した。