妖の王子さま
「白玖・・・。おかえり」
「・・・うん」
蒼子が声をかけると、白玖は力なくそう答えた。
蒼子はそんな白玖が気になり立ち上がって側による。
「どうしたの?何か、悲しいことがあった?」
「・・・ううん。なんでもないよ、蒼子」
白玖は、よく名前を呼ぶ。
蒼子は、なんとなくそのことに気づいていた。
白玖に呼ばれる自分の名前が少しこそばゆく、嬉しかったのだ。
「蒼子、膝かして」
「・・・うん」
甘えるように白玖がそういうと、蒼子は頷き座った。
その膝の上に白玖が頭を乗せ瞳を閉じた。
「き、狐め・・・っ」
牛鬼がそんな二人を見て悔しそうに唇を噛みしめる。