妖の王子さま
どうしてこのような場所にいるのだろう。
自分が、なにをしたというのか。
頭の中を巡らしてみても、答えなんてものは出るはずもなく。
「あの、どうして私は・・・」
だからこそ、目の前の多々良に聞くしかないのだと、恐怖を押し尋ねた。
目は見ないよう。
今度こそ、彼の目を見てはいけないと。
「大丈夫ですよ。目を見ても」
蒼子の思いなどお見通しのようで、多々良はそう言って喉の奥を鳴らした。
なにがおかしいというんだろう。
おかしいのは、多々良だ。
こんなことをして。
まるで誘拐みたいなこんな事。
「こんなことしても、無駄です。私には、家族なんていないし、お金なんてありません」
「はい?」
「だから、誘拐なんて馬鹿なことはやめてください!」
情に訴えてみる。
そんなこと、どうにもならないと思ってはいるが。