妖の王子さま
白玖は、零れたお椀の汁を指で触れるとそれを口に含んだ。
「・・・毒」
「え!?毒って、どうして!」
「多々良を呼んで。薬を持ってこさせて」
「わ、わかった!」
白玖が牛鬼に指示を出し、牛鬼は慌てて外に飛び出した。
志多良は布団を用意し、布団に蒼子を白玖が運んだ。
バタバタと、慌てて処置を行う。
多々良が持ってきた薬を飲ませ、適切な処置を施すと蒼子は一命を取り留め、穏やかな表情で眠っていた。
「・・・よかった」
牛鬼はホッとしたように体の力を抜き座り込む。
「あ、あの!俺じゃないからな!運んできたのは俺だけど、毒なんか盛ってない!信じてくれよ!」
「わかっている。誰の仕業かくらい、見当はつく」
「え・・・?誰の仕業か、もうわかってんのか?」
白玖は険しい表情を浮かべ、牛鬼はそれ以上何も聞くことはできなかった。
ただ、蒼子が助かったことを安堵するしかできない。